達人に聞く、「カラーデザイン」の話。【藤枝智美氏編#2】コンセプトメイキングの現場
国際カラーデザイン協会のシニアカラーデザインマスター桜井輝子が各界の達人を訪ね、「カラーデザイン」にまつわるあれこれをインタビュー。ここでしか聞けない、とっておきの話をご紹介します。
藤枝 智美 氏 Fujieda Satomi
プロダクションデザイナー/空間デザイナー/美術デザイナー
大阪芸術大学映像学科卒業後株式会社グレイ美術入社。入社直後officeTarget 鈴木一弘氏に師事2012年よりデザイナーとして活動を始め、2014年独立。以後フリーランスのデザイナーとして映像の美術デザインをメインに活動。その他イベント空間、店舗デザイン、ウインドディスプレイやウェディングの空間デザインやコーディネートまで幅広く活動を行っている。[作品紹介]
CM:Y!mobile「ワイモバ学園」シリーズ/SUBARU XV「好奇心」篇 /STORY OF POKÉMON RESCUE/KIRIN 晴れと水「咲きます。」「夏がくるね。」篇/チオビタドリンク「家族のとびら」「チオビタと素顔」篇/ソフィはだおもい 「新肌習慣」篇「極うすスリム 青空ヨガ」篇/「超熟睡ガード 寝返りしすぎ」篇/Sonyハイレゾ級ワイヤレス ゾクゾクムービー:L’Arc-en-Ciel、JUJU、MAN WITH A MISSION篇/カントリーマアム「あたためてもしあわせ」「冷やしてもしあわせ」篇、明治ポイフル「ポイフルスクラッチ」篇/クラシエコッコアポシリーズなど多数
MV: 嵐「Doors」「つなぐ」/米津玄師「春雷」/AAA 「MAGIC」「Miss you」「 愛してるのに、愛せない」「SHOW TIME」/安室奈美恵「Birthday」/西野カナ「好き」「恋する気持ち」/Kis-My-Ft2 「TONIGHT」「Another Future」「Perfect World」「WANNA BEEEE!!!」/AKB48「シュートサイン」など。
プロダクションデザイナー/空間デザイナー/美術デザイナー
大阪芸術大学映像学科卒業後株式会社グレイ美術入社。入社直後officeTarget 鈴木一弘氏に師事2012年よりデザイナーとして活動を始め、2014年独立。以後フリーランスのデザイナーとして映像の美術デザインをメインに活動。その他イベント空間、店舗デザイン、ウインドディスプレイやウェディングの空間デザインやコーディネートまで幅広く活動を行っている。[作品紹介]
CM:Y!mobile「ワイモバ学園」シリーズ/SUBARU XV「好奇心」篇 /STORY OF POKÉMON RESCUE/KIRIN 晴れと水「咲きます。」「夏がくるね。」篇/チオビタドリンク「家族のとびら」「チオビタと素顔」篇/ソフィはだおもい 「新肌習慣」篇「極うすスリム 青空ヨガ」篇/「超熟睡ガード 寝返りしすぎ」篇/Sonyハイレゾ級ワイヤレス ゾクゾクムービー:L’Arc-en-Ciel、JUJU、MAN WITH A MISSION篇/カントリーマアム「あたためてもしあわせ」「冷やしてもしあわせ」篇、明治ポイフル「ポイフルスクラッチ」篇/クラシエコッコアポシリーズなど多数
MV: 嵐「Doors」「つなぐ」/米津玄師「春雷」/AAA 「MAGIC」「Miss you」「 愛してるのに、愛せない」「SHOW TIME」/安室奈美恵「Birthday」/西野カナ「好き」「恋する気持ち」/Kis-My-Ft2 「TONIGHT」「Another Future」「Perfect World」「WANNA BEEEE!!!」/AKB48「シュートサイン」など。
取材日/場所:2017年10月12日(木)/東京都世田谷区
- 藤枝智美氏 ♯2
- コンセプトメイキングの現場
- 藤枝さんが昨年手がけられた、嵐の「つなぐ」MVの舞台セットは、とても印象的ですね。

嵐「つなぐ」MV舞台セット (2017年リリース)
メンバーの大野智さんが主演する映画『忍びの国』の主題歌
- この曲は大野君の忍者の映画とタイアップしていまして、MVのほうも土っぽい感じで仕上げています。もともと退廃的な世界観を表現するというコンセプトがありました。監督からはアート空間の要素と鉄っぽさが欲しいという要望がありました。発想を膨らませていくと、タイトルの「つなぐ」からメビウスの輪*が浮かびました。セット中央の錆鉄のオブジェですが、実は地中に埋まっている部分も含めると、全体でメビウスの輪の形になるように設計しています。
※メビウスの輪とは、帯状の長方形の片方の端を180°にひねり、他方の端に貼り合わせた形状の図形(曲面)のこと。
- え~~!!これは、メビウスの輪だったのですね。そんな隠れテーマがあったとは、嵐ファンも必見ですね。
- はい。公にはなっていないものも含め、実は舞台セットに色々なメッセージを込めて制作しています。木工で造作した鉄骨オブジェもあえて赤錆風にすることで、映像のどこを抜いても赤がすっと入ってくるようにしています。吊るしている布も、素材感によってイメージが変わってくるので、問屋街に足を運んでたくさんの種類の中からイメージに合うものを選び、さらにそこに風合いが出るように汚し加工を施しています。

吊るされている布は理想的な透け感を求め、藤枝氏自らが問屋街を回って探し出したもの。
- 藤枝さんの作品は、最初のコンセプトが明確で強いからこそ、完成度が高くなるのでしょうね。コンセプトに曖昧な部分が残ったままだと、みんなが道に迷ってしまいますものね。
- 初めに計画するときにこのセットは何のためにこの大きさでここにあるのかという、意味合いのところからすべて自分で考えるので、途中からコンセプトが変わることはありませんし、スタートから制作スタッフ全員でコンセプトが共有できるのは心強いです。
- 提案の初期段階で、藤枝さんが関係者に提示される手描きのイメージパースや図面がとても美しいのですが、これらの制作にはどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか?


パースには具体的な参考写真とコメントが添えられているため、より正確にデザインイメージを共有することができる。
- 作品によって違いますがここ最近はタイトなスケジュールが多いので、PVですと打ち合わせを終えてから美術プランを作るのにだいたい2日間ぐらいです。長くて3日間くらいでしょうか。4日間あるとかなりじっくり考えられるので嬉しいです。
- え!?たったの2日間ですか?
- はい。寝ないで描いています。描き始めるとノンストップです。(笑)
- 依頼が来てから2~3日で、ビジュアルイメージだけではなく、セットの作り方や予算の部分まで含めて提案されるのですか?
- はい。(笑)
- すごいとしか言いようがないです。ここまで作り込むとなると、一週間くらいかかるものだと思っていました。
- 図面と美術プランでセットになっているので、サイズや仕様を含め、ほぼ完成形でご提案します。もちろんそこから細かな打ち合わせをして、美術費や細かい構造は大道具、小道具サイドと一緒に詰めていきますが、私の頭の中では初めのご提案の段階でセットが完成している状態です。現場によっても違いがありますが、「この映像のカラービジュアルはこんなトーンにする」ということが最初から決まっていれば、そのゴールに向けて色彩を考えていくことも多いです。例えば、「最後に黄色っぽいフィルターがかかってくるから、このくらいの色にしておこう」など、逆算して考えます。

藤枝氏愛用のコピックマーカー。「実際に作らないといけないので、最初のイメージパースの段階で建て込みから色彩計画まで、トータルで考えて描きます。」