色名辞典
色名とは?
私たちが日常生活で使う色の名前(色カテゴリー)は、子どもの頃に言葉を覚える段階で、ほぼ無意識に習得するものです。
日本語を始めとする主要な言語には11種類のカテゴリーがあり、これを基本色彩語(きほんしきさいご)と呼びます。
文化人類学者のバーリンと言語学者のケイによって、1969年に発表されました。
カラーデザイン検定3級・2級では、JIS(日本産業規格)「物体色の色名」(JIS z 8102:2001)に定められている269色の中から、和色名と外来語色名をバランス良く紹介します。
JISでは色を表すための方法として269色の慣用色名とは別に、JIS系統色名と呼ばれる色の表記方法を定めています。
それぞれの色名の解説文の1行目に記載したものが、JIS系統色名です。
また、カラーサンプルの左下にはマンセル表色系による色相、明度、彩度の値を、右下にはオフセット印刷で使用されるインキによるCMYKの値を記載しています。
鴇色
天然記念物となっている鴇は、江戸時代までは日本に数多く生息していた。
学名はニッポニア・ニッポン。風切羽はこのような色をしている。
桜色
桜の花びらのような色。 私たちのイメージの中に定着している桜色は、実際の花色よりも彩度が高い。これを記憶色(きおくしょく)と呼ぶ。
オールドローズ
灰色がかったバラ色。
オールドとは、昔の・くすんだ・鈍いなどの意味を持つ英語。 園芸では原種のバラに近い品種を総称する言葉。
紅色
紅花の花びらの色素で染めた赤。 中国から伝わったため呉の藍(くれないのあい)と呼ばれ、これが紅(くれない)に転じた。
臙脂
コチニールカイガラムシ(別名 エンジムシ)の色素で染めた色。
動物性染料の一種。友禅染や更紗(さらさ)染などに用いられている。
ワインレッド
赤ワインのような色。
関連する色名として、バーガンディー(ブルゴーニュ産の赤ワイン色)やボルドー(ボルドー産の赤ワイン色)がある。
朱色
辰砂(しんしゃ)から精製する硫化水銀(りゅうかすいぎん)を主成分とする顔料。
日本では朱肉や神社の鳥居の色として親しまれている。
サーモンピンク
焼いた鮭のような色。
オレンジ系ピンクの代表的な色とされる。
良く似た色に、珊瑚色(さんごいろ)がある。
栗色
栗は実が成熟すると、いがのある殻斗(かくと)が割れて中から堅い果実が現れる。
食用としている部分は、種ではなく果実である。
ココアブラウン
ココアのような茶色。
カカオの種子を発酵・焙煎させてすり潰したカカオマスからココアバター(油脂分)を搾油(さくゆ)した残りがココアの原料。
山吹色
春に咲く山吹の花のような色。この色は黄金色(こがねいろ)とも呼ばれ、江戸時代の隠語で山吹色の菓子といえば賄賂(わいろ)を意味した。
ベージュ
ベージュとは本来フランス語で、漂白・染色していない羊毛から作られる毛織物のことであった。
現在では色名として定着している。
カーキー
ヒンディ語で泥土色(でいどいろ)という意味。
多くの国々で陸軍の軍服の色として用いられた。
この色よりもさらに緑みを帯びた色域もカーキーと呼ばれる。
蒲公英色
たんぽぽの花のような色。
英語名はdandelion(ダンデライオン)で、ギザギザした葉がライオンの牙を連想させることに由来する。
抹茶色
抹茶とは、碾茶(てんちゃ)を石臼(いしうす)で挽いて粉末にしたもの。
全国で最も生産量の多いのは京都府で、最近では外国人にもお馴染み。
萌黄
木や草の若芽が萌え出る色という意味。萌木とも書く。 『今昔物語』や『平家物語』の中で、若者を象徴する色として登場する。
ミントグリーン
ハッカ油を原料とするリキュールのような色。ハッカとはシソ科のハーブ、ミントの別名。
清涼感のある香りが特徴で消臭、防虫効果がある。
マラカイトグリーン
マラカイトとは孔雀石(くじゃくいし)のことで、この石を粉末状にして作られる顔料がマラカイトグリーンとなる。
ピーコックブルー
孔雀(くじゃく)のオスはメスへのアピールとして華やかな飾り羽を広げる。
これよりも緑みがかった色は、ピーコックグリーンと呼ばれる。
シアン
青と緑の中間色相。
マゼンタ、イエローと並ぶ色料の三原色のひとつ。古代ギリシャ語で暗い青を表すcyanos(シアノス)が色名の由来である。
スカイブルー
晴れた日の空の色、空色。英語では単にsky(スカイ)と表現する。
空色に似た色名に、これよりもやや紫みを帯びた天色(あまいろ)がある。
セルリアンブルー
錫酸(すずさん)コバルトが主成分の、緑みを帯びた鮮やかな青色顔料。
絵の具の色名として用いられることが多い。名前の由来はラテン語の空色。
藍色
タデ藍を発酵させて染める青。
染色の濃さにより、甕覗(かめのぞき)→浅葱色(あさぎいろ)→縹色(はなだいろ)→藍色と呼び名が変化する。
瑠璃色
瑠璃は仏教の七宝(しっぽう)のひとつで、ラピスラズリの和名でもある。
オオルリなど、青い羽を持つ鳥にはルリの名が付けられている。
紺色
藍染めで得られる最も濃い色。
鎌倉時代は武士に愛好され、戦に勝つ縁起の良い色という意味で勝色(かちいろ・かついろ)とも呼ばれた。
江戸紫
江戸の武蔵野に自生していた紫草(むらさきそう)の根=紫根(しこん)で染められた紫色のこと。
京紫(きょうむらさき)はこれよりも赤みが強い。
ラベンダー
ラベンダーの花は古くから香水の原料として使われ、アロマテラピー(芳香療法)では、沈静・鎮痛・抗炎症作用があるとされている。
マゼンタ
色料の三原色のひとつ。
色名は、イタリア統一戦争で伊仏連合軍が勝利した戦地名マゼンタに由来。
モーブに次いで1859年に造られた合成染料。
生成り色
染めたり晒(さら)したりしていない糸や生地の色。主に木綿の色を指す。
1970年代には自然志向の風潮に乗り、生成りのシャツが流行した。
アイボリー
アイボリー(ivory)とは象牙(ぞうげ)のこと。
黄みがかった白を指す言葉として私たちの生活に定着している。
日本語では象牙色という。
利休鼠
わずかに緑みを感じさせる灰色のこと。
関連する色名として茶人・千利休(せんのりきゅう)に因んだ利休色(緑みがかった茶色)がある。
チャコールグレイ
チャコール(charcoal)とは炭・木炭のこと。
一般に明度の低い灰色を広く指す言葉。
戦後、ビジネスパーソンのスーツの色として定着した。
シェルピンク
シェルとは貝殻(かいがら)という意味で、貝殻の内側に見られる淡いピンクを指す色名。
本来は、光の干渉(かんしょう)によって現れる色。
紅梅色
春先に花を咲かせる紅梅の花の色。
平安時代の貴族は紅染めを愛好し、濃紅(こきくれない)とともに、この紅梅色もたいへん人気があった。
茜色
茜の根から採れる染料で染めた濃い赤。茜は日本の山野にも自生している蔓草(つるくさ)の一種で、根が赤いため「赤根」とも表記された。
蘇芳
インド、マレー半島原産のマメ科の落葉低木である蘇芳の心材に含まれる色素で染めた色。
『続日本記(しょくにほんぎ)』にも登場する古い色名。
カーマイン
中南米のサボテンに寄生するコチニールカイガラムシの動物性染料に由来する赤。
非常に鮮やかな色が得られるため、貴重な染料とされた。
海老茶
明治時代に女学生の袴(はかま)の色として使われた色。
この色は古来、山葡萄(やまぶどう)を由来とする葡萄色(えびいろ)と呼ばれていた。
テラコッタ
「焼いた土」を意味するイタリア語から来た色名。
粘土で成形して乾燥させ、釉薬(ゆうやく)をかけずに低い温度で焼く、素焼きの土器の色。
黄丹
紅花と梔子(くちなし)を掛け合わせて染めた色。
皇太子の正式な袍(ほう)の色で、一般の人々が着用できない禁色(きんじき)とされていた。
琥珀色
琥珀は太古の樹脂が化石になったもので、古くから装身具や装飾品として使わてきた。
英語ではamber(アンバー)と呼ばれる。
クロムイエロー
クロム酸鉛を主成分とする鮮やかな黄の合成顔料で、19世紀に登場した。
ゴッホの「ひまわり」はこの絵の具を使って描かれたとされる。
レモンイエロー
熟したレモン果実のような色。
16世紀から存在する、古い色名の一つでもあるが、当時のレモンイエローはクリーム色に近いものであった。
刈安色
刈安はイネ科の多年草で「刈りやすい」から「かりやす」と名付けられた。
色名から分かる通り、手に入りやすく身近な黄色染料であった。
芥子色
芥子菜(からしな)の種から作るカラシのような色。
比較的新しい色名で、英語のmustard(マスタード)の訳語だという説もある。
鶯色
江戸時代に登場した色名とされ、鶯茶(うぐいすちゃ)と混用された。
鶯は鳴き声だけでなく、羽の色までも人々に愛されていたらしい。
オリーブ
オリーブの実のような色。
JIS慣用色名の中には、他に「オリーブドラブ」や「オリーブグリーン」がある。
英語圏では非常に一般的な色名の一つ。
緑青色
緑青とは孔雀石(石緑)を原料とする顔料の色で、英語ではMalachite Green(マラカイトグリーン)。
銅の表面に生じる錆もこの名で呼ばれる。
常磐色
松や杉など、冬でも葉を落とさない常緑樹の緑を表す美称。
英語にもこれに相当するEvergreen(エバーグリーン)という色名がある。
ビリジアン
水酸化クローム顔料をもとに作られる絵の具の色名。
12色セットの中にこの色が入っているのは、黄と青の混色で作ることができない色だから。
若竹色
その年に生えたばかりの若い竹のような色。
伝統色名には竹の状態に応じた色名が複数存在し、この色の対語は「老竹色(おいたけいろ)」である。
青竹色
青々と成長した竹の幹のような色。
青竹色とは対照的な色が「煤竹色(すすたけいろ)」であり、日本人の自然に対する感性が色名にも現れている。
納戸色
江戸時代に流行した藍染めの色の一つ。
由来は諸説あるが、衣類や調度品をしまっておく納戸(押し入れ)の垂れ幕にこの色が使われたらしい。
新橋色
明治時代後期~大正時代にかけて、東京・新橋の芸者たちが好んで着物に取り入れた合成染料による色。
「金春色(こんぱるいろ)」とも呼ばれる。
甕覗き
藍染めの淡い色。
藍の染料が入った甕(かめ)をちょっと覗いただけの色、というユーモアのある色名。
またの名を「覗色(のぞきいろ)」という。
ターコイズブルー
ターコイズはトルコ石のこと。
青と緑の中間的な色合いの鉱物は珍しく、古くから宝飾品として使われた。
16世紀から存在する古い色名の一つ。
コバルトブルー
アルミン酸コバルトを主成分とする青色顔料。
18世紀に発見され、19世紀の中頃には絵の具の色として普及。印象派の画家たちも愛好した。
ネービーブルー
イギリス海軍(Royal Navy)の軍服にちなんだ色。
もとは藍染めの濃い青を指したが、やがて人工藍に代わり、色名だけが残ったとされる。
ウルトラマリンブルー
ラピスラズリを原料とする青の顔料。
ウルトラマリンは「海を越えて渡来した」という意味をもつ。
聖母マリアの象徴色としても使われてきた。
モーブ
1856年のこと、マラリアの特効薬であるキニーネを合成する実験の途中で偶然に発見された、世界初の合成染料。以降、続々と合成染料ができる。
オーキッド
オーキッドとは蘭(らん)のこと。蘭の花から付けられたこの色名は、英語圏において薄紫色を表すために広く使われている。
チェリーピンク
「サクランボのようなピンク」という意味の色名だが、実際のサクランボよりも紫みが強い。
15世紀半ば頃から存在する古い色名とされる。
スノーホワイト
雪のような白という意味で、日本語の純白に近いニュアンスをもつ。白に対する美称として、話し言葉や文学の中で慣用的に用いられている。
ランプブラック
ランプの油を不完全燃焼させて作る煤(すす)を原料とする、黒色顔料。
煤や炭(すみ)から黒い顔料を得る方法は古い時代から確立されていた。