【日本の伝統色】Japanese Traditional Color Vol.11

2024年10月23日 「日本の伝統色」あれこれ

第11回目のテーマは ◆銭湯◆ です。

◆身近にあるけれど、普段はあまり意識しない場所
◆最近めっきりその数が減ってしまったけれど、行けば心身共にリラックスできて、最高の気分になれる場所
◆お風呂上りのコーヒー牛乳が楽しみな場所

私にとって銭湯とは、そんな場所です。

今から6年ほど前(2018年)当時の私は「日本伝統色をテーマにした配色本」を制作していました。
全部で100項目のテーマを決め、それぞれのテーマを端的に表現する写真を集める作業が、執筆前の下準備になります。

テーマのひとつを「銭湯」にしたものの、フリー素材などでは、なかなか「これ!」と思う写真が見つからず困っていました。

スタッフのひとりが、都内の銭湯に片っ端から電話をかけてくれて、ようやく巡り合えたのが東京都・杉並区の大黒湯でした。
大黒湯のご主人が「うちはちょうど半年ほど前に(銭湯絵を)描き直してもらったばっかりだから、今ならキレイだよ」と、
開店前の写真撮影と、書籍への掲載を快諾してくださったのです!

約束の当日、朝から真夏のような陽射しが照りつける中、私はいそいそと大黒湯を訪ねました。
ご主人と奥様が出迎えてくださって、貴重な「色の話」をたくさん教えてくださいました。

◆現在、熟練した銭湯絵師は日本にたったふたりしかおらず、そのひとりがこの絵を描いた丸山清人氏であること
◆銭湯絵は、赤・黄・青・白のペンキで、開店前の短い時間で描かれるということ
(初めから茶色のペンキがあるわけではなく、混色して茶色にするのだそうです)
◆先代のご主人は、とても色彩にこだわりのある人で、女湯の更衣室の壁をモダンな西洋風の紫にしていたこと
(女性客へのもてなしの気持ちを込めて、その色にしたらしいと伺いました)

「ああ、これこそ、ずっと大切にしたい日本の色だな…」と感動しながら、開店前の写真を何十枚も心行くまで撮らせて頂きました。

(文・写真 桜井輝子/画像引用『配色アイデア手帖 日本の美しい色と言葉』SBクリエイティブ)