【日本の伝統色】Japanese Traditional Color Vol.3
2024年10月22日 「日本の伝統色」あれこれ第3回目となる今回は ◆正しい色の呼び方◆ について考えてみたいと思います。
秋が深まり、陽が短くなってきました。
木々の葉が赤や黄色に色づき、農家の軒下には渋柿が吊るされる頃です。
柿色(かきいろ) といえば、今では「熟した柿の実の色」と決まっていますが、
江戸時代までは「柿渋(かきしぶ)で染めた赤茶色」、つまり 柿渋色(かきしぶいろ) のことでした。
完熟した柿の実のような色は、柿色ではなく照柿(てりがき) と呼ばれていたのです。
色の名前は、時代や文化によって変化します。
「ある色」に対して絶対に正しい呼び名というものを特定することができず、
逆に、ある名前で呼ぶことのできる「色の範囲」は
ピンポイントではなく、かなりの幅(ゆらぎ)をもっています。
自然発生的に生まれてくる流行色名(りゅうこうしきめい)もあれば、
商業的な視点で、世の中の人々がときめきを感じるような名前を創作することもできます。
色に名前を付ける時には「正しいか、間違っているか」で考えるのではなく、
多くの人々が「認識を共有できるかどうか」で考えると良いようです。
(文と写真 桜井輝子)