【日本の伝統色】Japanese Traditional Color Vol.2

2024年10月22日 「日本の伝統色」あれこれ

第2回目のテーマは ◆実りの秋の黄金色(こがねいろ)◆ です

昔は銀のことを「しろがね」、金を「こがね」と呼びました。
マルコ・ポーロの 『東方見聞録』 の中で、日本は黄金(おうごん)の島として紹介されています。

金が豊富に採れた日本では、万葉の時代から工芸品や美術品の材料として
金箔(きんぱく)や金泥(きんでい)が使われてきました。
歴史の教科書の中にも、足利義満の金閣寺、豊臣秀吉の黄金の茶室、安土桃山美術の金碧障壁画などが登場します。

また、仏教では金色と書いて「こんじき」と呼び、最高の存在を象徴する色とされますが、
現実の世界では金色を「きんいろ」と呼び、富と権力を象徴する色とされます。

金色はまた、黄金色(こがねいろ)とも呼び、実りの秋や収穫を象徴する色でもあります。

時代が下った江戸時代には、大判・小判の金色を意味する隠語として、
山吹色(やまぶきいろ)という色名が使われるようになりました。

時代劇の中で、悪徳商人がお代官様に「山吹色のお菓子にござりまする」と
怪しげな箱を差し出す場面がありますが、その中身はもちろんお菓子ではなく賄賂です。

このように、ひとつの色に対していくつかの異なる読みが存在し、
それぞれにニュアンスが変化するというのは、奥が深く興味深いですね。

(文 桜井輝子/写真 Adobe Stock)