なごや色さんぽ#21【 花嫁のマルチカラー 】

2019年06月01日 カラーコラム「なごや色さんぽ」

カラーデザインマスターによるカラーコラム「なごや色さんぽ」
第21回は名古屋の嫁入り菓子を紐解いていきましょう。もう紅白リボンに包まれた嫁入りトラックは見かけませんが、伝統の「菓子まき」は今も結婚式の人気のイベントです。

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【 花嫁のマルチカラー 】
生涯の幸福を約束された花嫁、ジューンブライド。
結婚の際、欧米にはsomething fourという縁起担ぎ―何か一つ新しいもの、古いもの、借りたもの、そして青いものを身にまとうと幸せになれるという―があります。
新しいサテンの長手袋、祖母からの古いパールのネックレス、友人から借りたイヤリング、下着に青いリボン等。新緑の季節に純白のウェデイングドレス、そして聖母マリアの象徴の色、青。何ともさわやかなイメージです。

名古屋の花嫁の色。ここでは一転、マルチカラーを紹介します。
名古屋の嫁入りときいて、「菓子まき」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?そう、色とりどりのお菓子のパッケージの色です。

菓子まきは名古屋だけではなく全国各地で行われていました。古くは、花嫁が村からよそへ嫁入りに行くのを石を投げたり、道中に材木を並べたりする妨害や、しきたりがあったそう。※1
おめでたい日にそんな仕打ちは悲しいですね。そこでお菓子やご祝儀を渡して道をあけてもらったことにどうやらこの菓子まきの起源があるようです。
♪嫁さん嫁さん菓子おくれ。菓子がなければ通さんよ。※2

名古屋西区に新道菓子問屋街があります。
道にある歴史案内によるとここの菓子製造の歴史は名古屋築城にさかのぼるとのこと。
その菓子産業が発展したのは関東大震災時。壊滅的打撃をうけた首都圏への菓子の供給を担いました。
桜井商店のよしえさんにお話を伺いました。
寿のパッケージに詰められた1000円~2000円の物はご近所、親戚の方への手渡し用、500円位のものはばらまき用というのがスタンダードとのこと。
手渡し用の需要は減少傾向ですが、結婚式場でばら撒くイベントは今も盛ん。週末はカップルがお菓子を探しに来るそうです。
ちなみにご本人はこちらにお嫁にいらしたとき500個お店の二階からまいたとか。菓子屋に嫁いだからからにはね~、とよしえさん。なんと華やかなこと。
名古屋の菓子まきのイメージはここ新道菓子問屋街が一役買ったことは間違いなさそうです。 

540円の商品の中身。メインカラーを見てみましょう。お菓子でパンパンに膨らんだパッケージ、手にするだけでワクワクします。
鯛の形のチョコレート菓子・・・赤、金
都昆布・・・・・・・・・・・・赤
海苔巻きあられ・・・・・・・・赤、橙
おにぎり山・・・・・・・・・・橙、緑
コアラのマーチ・・・・・・・・緑、黄、赤
かっぱえびせん・・・・・・・・赤、黄
チョコチップクッキー・・・・・茶

めでたい鯛やよろこぶ昆布、腰曲がりの長寿の海老。色々縁起が担がれています。数は7個でしたが割れない奇数か、8個は末広がり、9個は福が来る、でこれまためでたし。お客様のご要望と予算で中身は自由変動です。

色はおおよそ赤、橙、黄、金、緑、茶。名古屋の花嫁は、生命のパワーあふれる赤、そしてぬくもりのある橙や黄色、自然風景の緑色に祝福されお嫁に行くのです。ん?よーく見てみるとかっぱえびせんの「カルシウム」の文字が唯一の青!きっちりsomething blue。・・・偶然ですが。

もし名古屋の結婚式に招かれ、菓子まきがあったら集中して楽しんでください。戦いはあっという間ですから。

by カラーデザインマスター 後藤紀子

※1『日本の民俗 愛知』礒貝勇、津田豊彦著
※2お嫁さんの菓子貰いを津島地方で「道よけ」呼ばれ、その際歌われていた唄。『縁起菓子・祝い菓子―おいしい祈りのかたち―』亀井千歩子著より