達人に聞く、「カラーデザイン」の話。【藤枝智美氏編#3】色のない世界に色を生み出す

国際カラーデザイン協会のシニアカラーデザインマスター桜井輝子が各界の達人を訪ね、「カラーデザイン」にまつわるあれこれをインタビュー。ここでしか聞けない、とっておきの話をご紹介します。

達人に聞く「カラーデザイン」の話

藤枝 智美 氏 Fujieda Satomi
プロダクションデザイナー/空間デザイナー/美術デザイナー
大阪芸術大学映像学科卒業後株式会社グレイ美術入社。入社直後officeTarget 鈴木一弘氏に師事2012年よりデザイナーとして活動を始め、2014年独立。以後フリーランスのデザイナーとして映像の美術デザインをメインに活動。その他イベント空間、店舗デザイン、ウインドディスプレイやウェディングの空間デザインやコーディネートまで幅広く活動を行っている。

[作品紹介]
CM:Y!mobile「ワイモバ学園」シリーズ/SUBARU XV「好奇心」篇 /STORY OF POKÉMON RESCUE/KIRIN 晴れと水「咲きます。」「夏がくるね。」篇/チオビタドリンク「家族のとびら」「チオビタと素顔」篇/ソフィはだおもい 「新肌習慣」篇「極うすスリム 青空ヨガ」篇/「超熟睡ガード 寝返りしすぎ」篇/Sonyハイレゾ級ワイヤレス ゾクゾクムービー:L’Arc-en-Ciel、JUJU、MAN WITH A MISSION篇/カントリーマアム「あたためてもしあわせ」「冷やしてもしあわせ」篇、明治ポイフル「ポイフルスクラッチ」篇/クラシエコッコアポシリーズなど多数
MV: 嵐「Doors」「つなぐ」/米津玄師「春雷」/AAA 「MAGIC」「Miss you」「 愛してるのに、愛せない」「SHOW TIME」/安室奈美恵「Birthday」/西野カナ「好き」「恋する気持ち」/Kis-My-Ft2 「TONIGHT」「Another Future」「Perfect World」「WANNA BEEEE!!!」/AKB48「シュートサイン」など。

取材日/場所:2017年10月12日(木)/東京都世田谷区

藤枝智美氏 ♯3
 色のない世界に色を生み出す
桜井 輝子
長崎地域電力のCMでは、セットを彩る「布のフラッグ(三角の旗)」が可愛くて印象的ですね。
長崎地域電力

長崎地域電力

長崎地域電力 CMセット(2016年リリース)
※CMはYouTube長崎地域電力公式アカウント「長崎地域電力(30秒)」よりご覧頂けます。

藤枝智美
ありがとうございます。こちらのセットは「子どもの秘密基地」というコンセプトで、長崎の無人島で撮影しました。布には原色をあえて使わず、少しだけくすみがかった深みのある落ち着いたトーンの布にして、さらに風化したニュアンスを出すためにエアーで埃っぽいエイジング※をかけています。鮮やかな原色ですと、前に出すぎてしまって背景の自然の色から浮いてしまうので。目で見てバランスが良い色って、不思議と後の映像処理で色を調整してもバランスが崩れないのですよね。

※エイジング: 素材を古びた風合いに見せるための加工

桜井 輝子
弱すぎず強すぎずの絶妙な存在感ですね。すべて「仕上がりから逆算して考える」というのは経験を重ねたプロのなせる技ですね。
藤枝智美
仕上がりは常に頭の中でイメージしていますね。素材の質感も、カメラのフィルターを通すことで伝わりづらくなってしまうことがあるので、肉眼でちょうどいいと感じる質感のもう一段階上まで加工を施して表現するようにします。最終的に映像になった時の見え方を意識して作っていきます。
桜井 輝子
ひとつひとつの仕事でチャレンジした経験が、ご自身の引き出しになるわけですね。場所によっては、色を付けたり加工を施すことが難しいケースもあると思いますが、その時はどのようにされているのですか?
藤枝智美
はい、ロケ地では原状回復することが基本となるので、きれいに元の状態に戻せる方法を考案して作ります。大丸300周年記念のWEBドラマは4話仕立てとなっているのですが、「色を印象的に見せたい」という要望があったので、セットのポイントとなる場所にバラせる方法※で色をつけて可愛らしい世界観を作りました。メインの登場人物の男性の部屋は寒色と黄色でいこうと話し合っており、結果的に黄色をベースカラーにして、ポイントで寒色系を加えていきました。もともとの部屋には色が一切なかったので、ラインを入れたりコルクボードに色を塗って壁に貼り付けたりと、色々な方法で色を足しています。

※バラす:解体、撤収、撤去などの意味で使用される業界用語。
※大丸300周年記念WEBドラマ「1/6ドールの彼女」は公式サイトよりご覧頂けます。

大丸部屋

メインの登場人物の男性の部屋。黄色と寒色系を組み合わせたインテリアを考案。

大丸部屋
大丸部屋

オフィス(写真上)は、もともと色が付いていない柱に色付けを行っている。

桜井 輝子
塗装でも下地で色の出方が違ってきますよね。色の知識だけでなく素材を知るということが、目指す色を的確に再現することになるのですね。藤枝さんは、普段から興味を持って新素材を調べたりされるのですか?
藤枝智美
はい。これをどう使ったらセットに活きるだろうかとワクワク考えながら見ています。新しいものを見たり、挑戦するのは好きですね。ちょっとしたインスピレーションが次の仕事につながることもあります。たまたま仕事前に行った美術館であったり、旅行に行った時に見たものだったり、日々の生活の中からアイディアが生まれたりすることが多いのですよ。
桜井 輝子
その時の感性に響くものをアイディアソースにして表現するという感じでしょうか?
藤枝智美
そうですね。本当に無駄がないのです。映像美術って総合芸術なので、自分で絵を描けたらその絵を、物が作れるならその物を映像空間の中に飾れたりですとか、自分の経験をすべて生かせるところが、すごく楽しいです。
桜井 輝子
カラーの仕事と相通じるものを感じます。日々の体験がすべて自分の血となり肉となる、無駄になることなどひとつもないという信念は仕事を推進していく上で力になりますね。藤枝さんのワクワクした気持ちが、このショートムービーのあちらこちらに反映されているように感じます。
藤枝智美
本当だったら色がない場所にたくさんの色を散りばめているので、そういう視点で見ていただけるととても嬉しいです。日本は景観を気にしている分、街中に色が少なかったりするので、映像の中にだけ存在する色を作るという仕事は多かったります。
桜井 輝子
それは面白いですね。映像の世界の中でだけ生きる色…なんだか素敵。(笑)
藤枝智美
色を決める作業は楽しいですよね。私はBenjamin Moore(ベンジャミンムーア)の色見本帳を愛用しています。色の名前が可愛いところがお気に入りで。名前からインスピレーションが降りてくることもあるので、使っていて楽しいですよ。
ベンジャミンムーア

色見本帳「Benjamin Moore」。今回のインタビュアーである桜井も、著書『配色アイデア手帖』執筆の際に参考にした。

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