会長からのご挨拶

会長 浅場克己

 日本人ほど昔から敏感に色を見分ける才能を持った民族はいないと思う。色を感じる才能とは心がとても深いということに繋がるのだ。僕は色のことを思うと清少納言の枕草子を思い出す。

 「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは少し明りて紫だちたる雲のほそくたなびきたる。夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。螢の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。冬は、つとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。」

 このすばらしい自然観察を一読して、カラーデザイン検定に望んでほしい

浅葉克己デザイン室
浅葉克己

■プロフィール
浅葉克己 Katsumi Asaba
アートディレクター。国際カラーデザイン協会会長。

1940年神奈川県横浜市生まれ。桑沢デザイン研究所、ライトパブリシティを経て、75年浅葉克己デザイン室を設立。代表作にサントリー「夢街道」、西武百貨店「おいしい生活」、武田薬品「アリナミンA」等。日本アカデミー賞、亀倉雄策賞など受賞多数。東京ADC委員、東京TDC理事長、JAGDA会長、AGI日本代表、東京造形大学客員教授、桑沢デザイン研究所10代目所長。卓球六段。2002年紫綬褒章受章。13年旭日小綬章を受賞。